孤独な我道

 

 

公式大会まであと三週間。

 

 

 

ぷよテトをずっと触っているのだが、連鎖が組めない。

いや、正確には組めなくはないのだが、なんだか飽和が減っている。

 

 

幾度となく言っているが、ぷよテトはゲームスピードが速い。

その中でも一番脳に負担が来るのが最上部ということになる。

恒常的にネクストやネクストへの反応が遅れ、思考が追い付いていないのか。

 

 

 

 

いつものように対戦者の現れないTwitterでの募集を眺めながら、また一人連鎖を組む。

今日は何を聞きながら練習しようか。

 

(ああ、いいのがあるじゃないか。)

 

過去に自分が歌った曲、自分で作った曲を久々に掘り返した。

自己表現、創作、めっきりやめてしまったなあと思い返す。

何者かでありたかった、主人公でありたかった自分を。

 

 

 

 

 

『主人公を引退しよう』と思ったのは、結局いつだったのか?

おそらく、2016秋。

ちょうど「何者か」になった日だった。

 

 

 

“社会のどこにでもいる一人として、何の変哲もない日常を過ごさなければならない。”

そんなことは、頭の中では10年前くらいからわかっていたはずだった。

でも、それはおそらく主人公ではない。

自我は、自分を特別視したがった。

 

 

むしろ特別でもなんでもなくていい。

僕は僕の思う「何者か」でありたかった。

僕は誰かに認められたかった。

僕は僕に認められたかった。

 

 

 

僕は僕を認めるために、誰よりも僕に詳しくなった。

僕は僕を認めるためのフェーズをひとつずつ踏んでいった。

そのゴールが、公式大会での優勝だった。

 

 

 

そして僕は、主人公を辞めた。

 

 

 

ステージも、物語も、ちょうどいい幕引きだろうと思った。

英雄譚には十分すぎるものを授かった。

 

 

 

 

友と、そんなことを語っていた。

これから何をしようかなんてことも話していた。

 

けれども。

 

 

 

突拍子もなくアナザーストーリーを与えられてしまった。

……僕はきっと「何者か」として臨むのだろう。

かつて主人公だった時の自分を思い出して。

 

 

 

連鎖、思い出せるかな。

誰もが組むような器用な連鎖は、主人公を諦めた者の妥協だ。

誰にも真似できなかった頃の最初の自分。

まだ、思い出せるかな。

 

 

 

そしてまた、一人で連鎖を組む。

 

 

 

ここはそんな主人公道の舞台裏。

もう近くには誰も残っていない、孤独な我道を往く。